みなさんは、日本で、食べられるのに廃棄されている食品(食品ロス)の量をご存知でしょうか。
2018年時点での食品ロスの数量はおよそ年間約600万トンと推測されています。
これは、一人あたり1日お茶碗一杯分の食べ物を捨てているという計算になります。
2015年時点での世界の食料援助量は約320万トンとされており、食料援助量の約2倍の量の食品が日本で廃棄されていることが分かります。
世界に飢餓に苦しむ人がいる一方で、毎日食品を捨てている国がある、という事実を日本に住む私たちは知っておかねばなりません。
また、食品ロスの約半数は家庭から出ているとされています。
今回は、家庭内での食品ロスの原因を把握し、ロスが出にくい仕組みを作ることで、少しでも廃棄される食品量を減らしたいと思い、記事にまとめてみました。
- 1.家庭内の食品ロスについて
- 2.家庭内の食品ロスを減らすためにできること
- 3.まとめ
1.家庭内の食品ロスについて
日本で出る食品ロスのうち、約半数が家庭内の食品ロスとされています。ここでは、家庭内の食品ロスの実態についてみていきたいと思います。
1-1.家庭内の食品ロスの実態
2018年時点の家庭内での食品ロスは約276万トンと推測されます。
参考)食品ロス量(平成30年度推計値)の公表 | 農林水産省
ハウス食品の調査によると、月に1回以上食品・食材を捨ててしまっている家庭の割合は、全体の約6割程度だそう。
捨てられやすい食品・食材の代表格には、きゅうり・レタス・キャベツ・白菜・もやし・大根・長ネギ・みかんなどの野菜・果物類、牛乳・豆腐・納豆・パンなどの消費期限が短い加工食品があげられます。
消費者庁の調査によると、家庭での食品廃棄の理由は、食べ残しが約半数を占めているようです。2割が傷んでいた、1割が賞味期限・消費期限切れという結果となっています。
※消費者庁HPより引用
また、京都市の調査を元に4人家族を想定した場合、1家族が食べ物のムダに払っている年間費用が約65,000円という試算結果もあります。食品ロスは家計にもダメージを与えていることがわかりますね。
1-2.家庭内で食品ロスが発生する要因
最初から捨てるつもりで食品を買っている人などいないのに、なぜ食品ロスが発生してしまうのでしょうか。食品ロス発生には、以下のような要因が考えられます。
①食品の買いすぎ・重複買い
「セール品だから」「まとめ買いがお得だから」という理由で必要以上に購入してしまう、またストックがあることを忘れて重複して購入してしまう、ということもあると思います。大量に買った結果、期限内に食べ切れないという事象が発生してしまえば、逆にお得ではないですよね。
②料理の作りすぎ
食べきれる以上の料理を作ると、余った料理を食べ切れずに腐らせてしまいやすくなります。
③急な予定の変更
仕事仲間と外食の予定が入る、家族がおかずを買って帰ってくる、田舎から大量の野菜が届く、など自分ではコントロール不可能な予定変更があると、調理予定だった食材や調理済みの食品の使い道に困ってしまいますね。なるべく家族間のコミュニケーションをまめにとることが大切ですね。
④食材や料理の食べ忘れ
早く食べないといけない食材や調理が冷蔵庫内に入ったまま、うっかり忘れてしまうということもあると思います。何がどこにあるか、いつまでに食べないといけないのかを把握していない場合に、食べ忘れが発生しやすいです。
⑤苦手な食材・食品
料理を作ったけれど、味が好きじゃないからという理由で家族が料理を食べてくれなかったということもあると思います。特に子育て期には子どもの食べ残しが多く発生と思います。また、頂き物としてが苦手な食品をもらってしまった、という場合も考えられます。
⑥料理の失敗
調味料の量を間違えてしまう、焦げてしまうなど、まずい料理になって食べられなくなってしまい、捨てざるを得ない状況もあると思います。特に料理があまり得意でない人は失敗しやすいかもしれません。定番メニューの腕を磨く、レシピ通りにつくる、料理中は料理に集中するなど、失敗しないよう注意する他ないですね。
⑦常温放置で腐らせてしまう
コンロで調理した料理を冷ましてから冷蔵庫に入れようと思っていたが、うっかり冷蔵庫に入れるのを忘れてそのまま放置してしまい、料理が腐ってしまったという状況もあると思います。夏場は、特に注意が必要です。
ここまでを総括すると、在庫やスケジュールの確認不足・うっかりミスにより、家庭内での食品ロスが発生しやすいといえます。
2.家庭内の食品ロスを減らすためにできること
食事作りは、食材の買い出し・献立決め・調理・保管方法の検討に加え、保管食材の管理・家族のスケジュールや好き嫌いなども考慮しなければならないことが多く、頭をフル回転させて使う家事の一つです。
食品ロスを減らすには、家族のスケジュール管理や食材や調理した料理の消費期限などを把握することが大切だ、ということはわかるけれど具体的にどうすればいいの?という疑問もあると思います。
ここでは、日常の習慣を見直すことで、負荷を少なく食品ロスを減らしていける仕組みをご紹介していきます。
2-1.冷蔵庫・食品庫内を整理整頓する
食品ロスを減らすには、どの食材がどこにあるのかを把握することが最も重要になってきます。整理整頓は、食材の重複買いや食べ忘れを防ぐことにつながります。
①何が入っているが一目でわかるようレイアウトする
扉をあけると、中が入っているか見渡せるような入れ方が理想です。詰め込み過ぎず、必要な量だけを保管することで食材の管理は楽になります。見渡せない棚の奥や引き出しの底に食材をため込まないようご注意下さい。どこに何を保管するのかあらかじめルールを決めておくと整理しやすいです。
冷蔵庫内での料理や食材の保管には、中身の見える透明なガラス製の保存容器がおすすめです。重ねて置けますし、そのまま電子レンジで温めることも可能です。ガラス容器はダイソーなどでも販売されているのでご興味のある方はお試し下さい。
②期限の早い順に並べる
消費・賞味期限の順に右から左、下から上、手前から奥に並べるなどとざっくりとしたマイルールを決めて、期限の迫っているものから食べるように習慣づけていくと、食べ忘れを防ぎやすいです。中身や消費期限を書いたテプラを貼り、綺麗に保管してもよいですが、何も記載せずただ順番にならべるだけでも効果ありです。
③定期的に整理整頓する
冷蔵庫の中は1週間に1回程度、食品庫の中は1か月に1回程度、中身の確認も含めて整理整頓されることをおすすめします。定期的に見直すことで、自分にとって使い勝手のよいレイアウトが見つかるはずです。また、
※番外編 ー 食材管理アプリの活用
食材管理アプリを活用して食材の期限を管理する手法もあります。
2-2.食材は食べ切れる量だけ買う
①買い物前に冷蔵庫・食品庫をチェックする
食材を購入する前には、家にどんだ食材があるかを確認しておきましょう。
食材管理アプリを使えば、外出先からも冷蔵庫の中身を把握することができます。
②買い物する食材をメモにまとめる
セール品などの誘惑に打ち勝つために、必要な食材のみメモに書き出しておきましょう。メモに書いてあるものだけ買う、と決めておくことで余計なものを買わなくて済みます。
③空腹時に買い物に行かない
空腹時に買い物に行くと、余計なものまで買ってしまうといわれています。なるべくお腹の中に何か食べ物を入れてから買い物されることをおすすめします。
※番外編 ー 宅配サービスの定期便の活用
コンスタントに一週間で消費する量の食材の量が決まっているのであれば、生協などの宅配サービスで、同じ商品が届く定期便を選ぶことも可能です。急な予定変更に対応できませんが、必要な量を定期的に届けてくれるため、買いすぎを防げます。
2-3.食べ切れる量だけ調理する
食べる量から逆算して、必要な分だけ調理しましょう。もし、大量に作る場合は保存のきく作り置きのおかずや、冷凍可能な料理にするなど工夫しておけば、食品ロスは防ぎやすくなります。
2-4.保存可能期間をのばす
①冷凍する
困ったときは冷凍保存です。大抵のものは冷凍できますので、食べきれずに困った食材がある場合は「食材名+冷凍保存」で検索してみて下さい。
消費期限が過ぎて捨てられやすいパンも冷凍保存可能です。クリームパンやサンドイッチなどのお惣菜パンも冷凍できますので、期限が切れそうパンがあればぜひお試し下さい。
②乾燥させる
しなびかけの野菜や果物は薄く切って干してみましょう。干し野菜のプロ・濱田さん曰く、大体なんでも干すことができるのだそう。キャベツや白菜などの葉物も干し野菜にできます。梅雨の時期を避け、天気の良い日に干すのがポイントです。乾燥状態によっては、1か月以上日持ちさせることができます。
魚や肉も干せるようです。詳細は以下の記事をご参照下さい。
食材を乾燥させる干し網がなくても、洗濯ネットやざるで代用できます。通気性のよい入れ物に入れて並べるだけと簡単です。
③漬け物にする
消費期限の短い野菜類は、ピクルス漬けや塩漬け・ぬか漬けとすることで、保存期間をのばすことができます。そのままおかずにもなるので便利ですね。
2-5.できる限り可食部を増やす
ブロッコリーの茎や野菜の皮など、普段捨ててしまっている部分って本当は食べられるんじゃない?と一度疑ってみて下さい。「〇〇の皮+レシピ」などで検索すると、自分では考えもつかなかったレシピに出会えるかもしれません。
2-6.賞味期限切れの意味を理解する
賞味期限は「おいしいめやす」と言われるように、おいしさを損なわずに食べられる期限です。賞味期限が過ぎたからといってその食品が傷んでいるわけではありません。色やにおい、味を確認し、異常がないと判断できたものはまだまだ食べられます。
※消費者庁パンフレットより引用
2-7.余っている食材を利用する
①残った料理をリメイクする
「料理名+リメイク」で検索すると、余ってしまった料理のリメイクレシピが出てきます。また煮物の汁なども、炊き込みご飯やリゾットに利用できます。カレー⇒カレーうどん⇒カレーピラフ、のように定番のリメイクレシピを考えておくと悩まないですね。
②残っている食材を積極的に活用する
例えばなかなか使い道がない調味料などは、賞味期限が切れがちだと思います。「ナンプラー+レシピ」などで検索して、調味料からレシピを考えるという方法もあります。また、防災備蓄用品も期限が切れて廃棄されやすい食品の一つです。定期的に活用し、順次入れ替えていきましょう。
③サルベージ・パーティを開催する
自宅で余っている食材を持ち寄って調理し、みんなで料理をシェアする集まりのことをサルベージ・パーティと呼びます。プロが出張してくれるサルベージ・パーティのサービスもあるようです。
2-8.食べきれない食材・食品は誰かに譲る
食べきれない食材・食品は、そのまま手元に置いていても最終的に廃棄する可能性が高いです。手元にある場合は誰かへ譲りましょう。
①知り合いへ譲る
食べてくれる親戚やご近所さん、友人などに譲り、食品を有効活用しましょう。
②フードバンクへ寄付する
フードバンクとは、様々な理由で市場に流通していない食品を、必要としている人の元へとどける活動のことです。フードドライブとも呼びます。生協はフードバンクの活動に力を入れられていることが多いです。個人で寄付をお考えの方は、お近くの生協店舗やフードバンクを推進する団体へお問い合わせください。
全国のファミリーマートでも寄付を受け付けています。
全国のお寺が窓口となって取り次いでくれる「おてらおやつクラブ」という仕組みもあります。47都道府県約1,500か所のお寺が窓口となっています。おそなえした食品や日用品は支援団体を経由して必要としている人の元へ届けられます。
※おてらおやつクラブHPより引用
3.まとめ
今回は、家庭内での食品ロスを減らす方法についてまとめてみました。家庭での食品ロスは、家計の節約にもつながります。また、一人ひとりの行動が変わることで、食品ロスの量も削減できると考えています。今回ご紹介した内容の中で、無理せず仕組み化できる部分から取り組んでいただければうれしいです。
参考文献
[食品ロス削減]食べもののムダをなくそうプロジェクト | 消費者庁
他にも捨てない暮らしに関する記事を書いています。
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