みなさんは、家庭ごみに占める生ゴミの割合をご存知でしょうか?
実は、燃やすごみのうちの約40%を占めるのが生ゴミなんです。
しかも、その燃やすごみに含まれる生ゴミの80%以上が水分とされています。
単純計算すると燃やすごみのうち32%は水分ということですね。
京都市の令和元年度調査をもとに1世帯(4人家族を想定)の燃やすごみが1,368g/世帯・日とすると、1世帯あたり年間の燃やすごみの量は約500kg相当。
うち200kgが生ゴミ(160kgは水分)であるといえます。
燃やすごみの処理費用が1トンあたり約52,000円より、一世帯あたり年間約10,000円分のお金を払って生ゴミを焼却処分している計算です。
しかも、そのうち約8,000円分は水分を蒸発させるために使われているともいえます。
燃えるごみの中の水分量が多くなると、水分を蒸発させるために無駄なエネルギーや税金が使われてしまうんですよね。
家庭ごみの中でも比率の高い生ゴミ処理は、日本のみでなく、海外でも課題となっていて、生ゴミを有効活用しようという取り組みがヨーロッパやアメリカを中心に広がりつつあります。
今回は日本や海外の生ゴミ処理の先進事例についてまとめてみました。
日本国内の事例
新潟県長岡市
長岡市では、2013年より生ごみバイオガス発電設備が導入され、生ゴミの分別回収が始まりました。
長岡市の生ごみバイオガス発電センターは65t/日の処理能力がある、日本で最大級の施設です。
家庭から回収した生ゴミごみを発酵させ、電気エネルギーと熱エネルギーを回収する仕組みです。
どのように発電が進むのかは以下の動画をご覧ください。
徳島県上勝町
徳島県上勝町は、山間に位置する人口約1,500人程の町です。
小さい町ながら、葉っぱビジネスや日本で初めてゼロ・ウェイスト宣言※をした町として注目されています。
※ゼロ・ウェイストとはごみをゼロにする取り組みのこと
上勝町では、町内のゴミステーションへ町民が直接ごみを運ぶため、ごみ収集車がありません。
ゴミステーションでは、13種類45分別が行われており、持ち寄られたごみの多くがリサイクルされ、サイクル率は80%以上。
上勝町では、「家庭から出る生ゴミは一切回収しない」という方針をとっています。
町民の理解がないとなかなか進められない独自の施策といえますね。
よって、家庭から出る生ゴミは自宅で処理しなければなりません。
ゴミステーションで回収してもらえないため、各家庭にコンポストや生ゴミ処理器が設置されています。
ちなみに、町内の事業所から出た生ゴミは、ゴミステーションの大型電動生ごみ処理機を利用して堆肥化できます。
鹿児島県大崎町
鹿児島県大崎町はリサイクル率日本一を14回達成している人口約13,000人の町です。
埋め立て処分場の使用年数を引き伸ばすため、1998年よりリサイクルに力を入れるようになり、現在は分別品目を27とし、埋め立てごみの80%以上の減量を達成しています。
畜産業や農業・水産業が産業の中心である大崎町では、家庭から出るごみの約60%を占める生ゴミ・草木を堆肥化している点が特徴です。
生ゴミ・草木類は専用のふた付きバケツに入れ、週3回の頻度で行政が回収。
回収された生ゴミは町内の有機工場に運ばれ、半年ほどかけて堆肥に生まれ変わり、地元町民に格安で販売されます。
生ゴミリサイクルの仕組みは以下の記事がわかりやすくまとまっています↓
他にも、大崎町では、廃油を回収し、農耕機のディーゼルエンジン・ごみ収集車の燃料や石けんに利用する「菜の花プロジェクト」や、おむつのリサイクルなどにも取り組まれています。
また、2030年に『サーキュラーヴィレッジ』をつくるという目標を掲げ、2021年には「大崎SDGs推進協議会」を設立。
OSAKINIプロジェクトをスタートさせるなど、住民・企業・行政が一体となった、研究・開発、情報発信、人材育成に力を入れています。
宮崎県新富町
宮崎県新富町は、宮崎平野を代表する野菜の産地。
人口約16,000人程度の町です。
新富町は、南九州大学・パナソニックと連携し家庭用生ゴミを堆肥化するリサイクルループを生み出す実証実験を開始することを、2021年5月に発表しました。
実証実験の内容は、任意の町民の家庭から出た生ゴミを、生ゴミ処理機を使って乾燥させてから回収、コンポストボックスに入れて完熟堆肥を作り、できた堆肥を市民農園などで利用するというもの。
実験がうまくいけば、堆肥化される生ゴミの量が増えていくかもしれませんね。
熊本県 黒川温泉
黒川温泉は阿蘇山の北に位置する30軒の旅館が集まった温泉郷です。
黒川温泉では、旅館から出た生ゴミを堆肥にし、地元の農家に使ってもらうコンポストプロジェクトを2020年9月より開始しています。
堆肥から作られた野菜を農家から購入し、旅館の宿泊客へ提供するという循環のサイクルを生み出しています。
アドバイザーとしてサーキュラーエコノミー研究家の安居昭博氏、コンポストアドバイザーの鴨志田純氏もチームのメンバーに加え、黒川温泉エリア一体で取り組み、「サステナアワード2020伝えたい日本の”サステナブル”」で環境省環境経済課長賞を受賞されています。
黒川温泉について知りたい方はHPをご覧ください↓
その他自治体一覧
ご紹介した以外にも、生ゴミ堆肥化・バイオマス発電している自治体は50ほどあるとされています。
そのうち約4割が北海道であったり、7割以上が人口5万人未満の自治体という特徴があります。
生ごみを分別収集・資源化している自治体|ごみっと・SUN vol.4
アメリカの事例
ニューヨーク市
ニューヨーク市では2013年にコンポスト収集プログラムが開始され、市内に200以上の回収場所が設置されています。
「2030年までに埋め立て物をゼロに」というスローガンのもと、これまで埋立処分していた生ゴミについて、徐々に回収拠点を増やし2030年までに全世帯に生ゴミ回収を義務付ける予定としています。
Did you know that 1/3 of NYC’s waste can be composted? When food scraps and yard waste decompose in a landfill, it creates methane, a harmful greenhouse gas. Let’s keep them out of the trash and put them into a compost bin! Learn more at https://t.co/cfwS4kdutx. #ICAW pic.twitter.com/LHd3Ef4uhF
— NYC zerowaste (@NYCzerowaste) 2022年5月1日
コンポスト容器に投下された生ゴミは堆肥化し、コミュニティガーデンや農場、公園、街路樹の土として活用されたり、市民に無料配布されます。
コンポスト可能なものは、果物と野菜のくず、脂っこくない食べ物のくず (米、パスタ、パン、穀物、シリアル)、コーヒーかす、卵の殻とナッツ、切り花・観葉植物、汚れた茶色の紙製品、鉢植えの土 など。
逆に、肉、魚、骨、乳製品、脂肪、油、脂っこい生ゴミなどは投入できないようです。
【参考】ニューヨークの新しい生ごみ回収 | DOWAエコジャーナル
バーモント州
バーモント州では、2020年7月1日にアメリカ初のコンポスト法が施行され、住民や企業が生ゴミをゴミ箱に捨てることが禁止、生ゴミの堆肥化が義務化されました。
義務化される生ゴミには、野菜の皮や種、卵のから、コーヒーかす、茶殻、そして食べ残しなどが該当します。
カリフォルニア州
バーモント州に次ぎ、2022年1月1日よりカリフォルニアでも生ゴミ堆肥化を義務付ける法律が施行されました。
堆肥化に該当するのは、未使用の食品、コーヒーかす、卵の殻、バナナの皮、その他の残飯です。
オランダの事例
オランダでは、1994年に生ゴミの分別が義務付けられました。
家庭から出た生ゴミや庭木の剪定枝は自治体が回収し、堆肥化施設やバイオガス製造施設へと運ばれます。
堆肥は主に農作物の土壌改善に、バイオガスは暖房や調理・ごみ収集車の燃料などに使われます。
【参考】循環型社会を目指すオランダの取り組み その2 ごみの分別
【参考】オランダの有機性廃棄物(家畜糞尿,生ゴミ等)対策の実態解明とその評価
アムステルダム市
「ワームホテル」と呼ばれる、中にミミズが暮らしているコミュニティ・コンポストの取り組みを地元住民と市の職員が始めています。
近所の人が持ち寄った生ゴミを「ワームホテル」内のミミズが食べて分解し、堆肥化した土を地元住民で分け合うという仕組みで運営されています。
持ち込みできる生ゴミは、果実・野菜、ティーバッグ、コーヒーかす、卵の殻、ダンボール、紙製卵パック、キッチンペーパー、ガーデニング植物、草食の小動物のふんなど。
肉やパスタ・パン、ソース加熱調理された食品、市販の花などはNGです。
「ワームホテル」はアムステルダム市内に200ヵ所以上設置されており、まだまだ増えそうな勢いです。
ヘンゲロ市
オランダの東部にあるHengeloという市では、前に大きなかごの付いた自転車で生ゴミを収集するというユニークな取り組みを行なっています。
本取り組みは、生ゴミの中に可燃ごみが混ざらないようにという分別意識の向上と、様々な人の交流を生むという両方の効果を期待して実施されています。
ドイツの事例
環境先進国といわれるドイツには、生ゴミ専用のゴミ箱があるのだそう。
集められた生ゴミは、堆肥化されて肥料として地元の農家に配られたり、バイオガス化されてごみ収集車などの燃料として使用されたりしてます。
スウェーデンの事例
スウェーデンでは、家に庭のある家庭では生ゴミをコンポストにして、家庭菜園の堆肥として使う家庭が一般的。
また、自治体でも生ゴミを分別回収し、堆肥化したりバイオガスを生産したりしています。
スウェーデンの特徴は、家庭から出る生ゴミのほか、食品メーカーの生ゴミや下水処理施設の汚泥からもバイオガスを発生させているところです。
生成されたバイオガスは、暖房や市バス・タクシーの燃料として使われます。
スウェーデンでは、生ゴミからバイオガスを回収し、公共交通機関の燃料として活用しています。こちらのゴミ箱は生ゴミ専用になっていて、ここに入れると地下を通って集積場に行きます。
— あまた🇸🇪→ (@amatam__2) 2022年10月5日
生ゴミはゴミではなく資源なんです!!! https://t.co/donV2wTs4V pic.twitter.com/0PBpnveTVE
「生ゴミ=燃料」という図式が成り立つくらい、スウェーデンの人にとっては生ゴミは資源だという考え方が根付いているようです。
まとめ
日本や海外の生ゴミ処理の事例をまとめてみましたが、いかがでしたでしょうか。
ごみを減らすには、もちろん個人レベルの努力も必要です。
一方、行政のリサイクルの仕組みとして日常に組み込まれれば、一気に資源化の方向に加速しやすいといえますよね。
それぞれの地域において前提条件は異なるといえますが、やろうと思えばできないことはない、ということを各事例が示してくれていると思います。
いつの日か「生ゴミ」という概念がなくなることを願っています。
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