ゼロウェイスト(=ゴミゼロ)という言葉を最近聞いたけれど、実際にゴミを出さない暮らしってどんなメリット・デメリットがあるの?
現実問題、ゴミを出さない暮らしって不可能じゃない?
という疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。
今回は、ゼロウェイストな暮らしのメリット・デメリットについて考えてみました。
目次
1.ゼロウェイストとは
1-1.ゼロウェイストの考え方
1-2.日本のゴミ排出量
2.ゼロウェイストな暮らしのメリット
2-1.節約につながる
2-2.家の中が片付く
2-3.インテリアが洗練される
2-4.企業広告に振り回されない
2-5.ゴミ出しの回数が減る
2-6.あるもので何とかする思考になる
3.ゼロウェイストな暮らしのデメリット
3-1.一つのモノを購入するまでに時間がかかる
3-2.購入するモノの単価が高め
3-3.外出時の荷物が増える
3-4.メンテナンスの手間がかかる
3-5.捨てられない病になると家の中のモノが増える
3-6.周りの人との温度差からフラストレーションが生まれやすい
3-7.ゼロウェイストを目指すと経済が縮小するのではないか
4.まとめ
1.ゼロウェイストとは
1-1.ゼロウェイストの考え方
ゼロウェイスト(Zero Waste)とは、ごみをゼロにすることを目標にできるだけ廃棄物を減らそうとする活動のことです。
ゼロウェイストの考え方が広まるきっかけとなったベア・ジョンソンさんの著書『ゼロ・ウェイスト・ホーム ― ごみを出さないシンプルな暮らし ― 』の中では、家庭内でゴミを減らすためには以下の5つのステップが挙げられています。
①Refuse(断る)
②Reduce(減らす)
③Reuse(繰り返し使う)
④Recycle(リサイクルする)
⑤Rot (堆肥化する)
完全にゴミをゼロにすることは難しいですが、以下の①→⑤のステップの順に考えて取り組むことで、家庭内のゴミの量を可能な限り減らせます。
具体的なゴミを減らす工夫については以下の記事を参考としてみて下さい。
1-2.日本のゴミ排出量
ここでは、ゼロウェイストな社会と現状とのギャップはどの程度あるのか、数値で確認しておきたいと思います。
環境省による一般廃棄物処理事業実態調査の結果によると、2018年時点のゴミ総排出量は4,272万トン※、1人1日当たり918g※のゴミを排出している計算となります。
1人あたり1年で約335kg※のゴミを排出、1人90歳まで生きるとすると一生で約30t※ものゴミを排出しながら暮らしているという計算となります。
※上記数値のうちの約2割は資源化ゴミとしてリサイクルされています。
また、以下のグラフを見ると昭和初期から約7倍にも一般廃棄物の量が増えていることがわかりますね。この50年ほどの間に、消費されるモノの量が格段に増え、使い捨て文化が根付いてきたことが要因だと考えられます。
図:環境省HPより引用
2.ゼロウェイストな暮らしのメリット
2-1.節約につながる
ゼロウェイストな暮らしを目指す中で、本当に必要なモノ以外買わない、繰り返し使えるモノを買う、リユース品を購入する、レンタルする、リペアして使い続ける、という思考で物事を考えるようになります。
新しいモノを買っては捨てるライフスタイルから、選び抜かれた少量のモノを繰り返し使うとライフスタイルへ移行すると、物欲も抑えられ、結果として無駄な出費が減り節約につながります。
2-2.家の中が片付く
本当に必要なモノ以外買わない、必要な期間だけレンタルし使い終わったら返却する、といった習慣などから家の中にあるモノの数は厳選されてきます。モノの数が減ると必然的に家の中は散らかりにくくなります。
2-3.インテリアが洗練される
使い捨てゴミを減らそう、リサイクルの容易な素材やコンポスト可能な製品をえらぼうと考えるとプラスチック製の商品を避けるようになります。
結果として、木・紙・布・金属・ガラス・陶器などでできた製品の割合が増え、家の中全体がお洒落なカフェのような雰囲気に自然と近付いていきます。
2-4.企業広告に振り回されない
本当に必要なモノだけを購入する視点や、リサイクルが難しいプラスチック製商品を避けようとすると、スーパーやドラッグストアの商品広告やTVやWEBのCMに情報のアンテナが反応しなくなっていきます。
自分にとって不要な情報をばっさりと切り捨てられるので、余計な情報に振り回されないですみます。
2-5.ゴミ出しの回数が減る
ゴミを減らすよう工夫するわけですから、ゴミの量は必然的に減っていきます。例えば、45Lの袋から15Lの袋に変わる、ゴミ出しの回数が週2回から月2回に変わるという結果につながります。
曜日ごとにゴミ出しチェックしなくてよくなり、ストレスや家事負担の低減にもなります。
2-6.あるもので何とかする思考になる
買わずに済ませようと考えると、本当に必要なモノは何かという思考にもつながります。例えば〇〇専用の商品、という便利グッズを見かけても、家にある別のモノで代用できないかと考える思考が身につきます。
3.ゼロウェイストな暮らしのデメリット
メリットだけではなく、デメリットに感じる点ももちろんあります。
3-1.一つのモノを購入するまでに時間がかかる
素材やパッケージにこだわるが故に購入に時間がかかってしまうという点はデメリットといえます。まだまだゴミを出さないことを前提に開発された商品が少ないことから、そもそもの商品の情報収集にも時間がかかります。
また、最近日本でもパッケージフリーで購入できる量り売りのシステムなども少しずつ広がってきています。これら量り売りでの購入にこだわろうと思うと、家から離れた場所まで電車や車で移動しなければない場合が多いです。
3-2.購入するものの単価が高め
まだまだゼロウェイストやプラスチックフリーを意識した商品が市場に少ないことから、割高となってしまう商品多いことも事実です。ただし安いモノを1年おきに買い替えるよりも、多少価格が高くても、繰り返し長く使う方が結果的に節約につながる場合もあります。
3-3.外出時の荷物が増える
外出時にマイバッグ、マイボトル、ハンカチ、マイカトラリーセット類を持ち歩き、マイ容器を持って買い物に行くとなると、どうしても荷物は増えてしまいます。
特に複数の商品を購入する際は、マイ容器の量が増えてしまいますね。車で移動する、キャリーケースを活用するなど、工夫したいところです。また、自宅に容器を回収しにきてくれる生活クラブの宅配サービスなどを選ぶという手段もあります。
3-4.メンテナンスの手間がかかる
繰り返し使うモノの洗浄や、壊れたモノのお直しに手間がかかる点は否めません。
一方で使い捨て用品のストック管理や、新しい商品を購入する手間などは減ります。
修理などは外注することができれば手間を減らすことができますね。
3-5.捨てられない病になると家の中のモノが増える
ゼロウェイストな暮らしを心がけていると、簡単にモノを捨てたくなくなります。
いつか使うから取っておく、フリマアプリなどで譲り先が見つかるまで自宅で保管しておく、といった発想になると、家の中にモノが増えていく結果につながってしまいます。
Refuse(断る)、Reduce(減らす)に注力し、家に入ってくるモノを減らすことで回避できると思います。
3-6.周りの人との温度差からフラストレーションが生まれやすい
まだまだゼロウェイストな暮らしを目指す人は少数派です。家族や同僚、友人ら理解を得るのは、難しいです。
ゴミを減らそうとしていても、家族が毎日ペットボトルゴミを持ち帰る、といったことも起こり得ます。
自らゴミを減らす活動をしていることを発信しつつ、周りの人の意見を聞きながらお互いに無理のでない内容で歩み寄ることも必要です。ゼロウェイストのメリットを伝えたり、自ら楽しんで取り組んでいる様子を見せることで相手にも興味をもってもらえるかもしれません。
3-7.ゼロウェイストを目指すと経済が縮小するのではないか
ゴミを出さない暮らしをすると、消費活動が制限され、経済に大きなダメージを与えるのではないか、という経済的デメリットも考えられると思います。果たして、ゴミを出さないゼロウェイストな暮らしを実現させるためには、経済にダメージを与えなければいけないのでしょうか。
以下の事例から考えると、ゼロウェイストな暮らしと経済活動は両立するといえるのではないでしょうか。むしろ、地球上の資源を無駄にしないために、必然的に到達しないといけない領域であるともいえます。
①江戸時代はゴミを出さない循環型社会だった
江戸時代は資源をムダにしない循環型社会として200年以上に渡り長く繁栄したよい事例といえます。江戸時代に使われていた道具はほぼ全てのものが修理可能なつくりになっていました。修理できないものでも、回収と処理のネットワークが構築され、多くはリサイクルされていました。使い終わった天然資源は燃やして灰にして肥料として使ったり、土に還すことで上手く資源を循環させる仕組みが成り立っていました。
参考文献:江戸に学ぶエコ生活術
②シェアリングエコノミー、リユース、量り売りビジネス拡大
2000年に入ってから、空間や移動手段・モノなどを複数人でシェアするシェリングエコノミーとよばれる考え方が広まっており、カーシェアやシェアハウス、洋服・家電のサブスクリプションなどのビジネスが普及しています。
また、フリマアプリの普及によりリユース市場の裾野が広がったり、IKEAやパタゴニアが自社製の中古品を再販売を始めるなど、リユース分野も変化しつつあります。
その他、パッケージフリーな量り売りショップの増加といった動きもあり、ビジネス界でもゴミを出さない循環型社会を目指した動きが広まってきているといえます。
③オランダが目指すサーキュラーエコノミーの実現
オランダは国家の戦略として2050年までにサーキュラーエコノミー(循環型経済)の実現に向けて舵を切っています。現在の大量生産大量消費のモデルから、プロダクトをつくる際の新しい資源の投下を極力抑え、既存の廃棄物を資源として活用する廃棄物のでない循環型のビジネスモデルへの移行を政府主導で行っています。
オランダでは、サーキュラーエコノミーの考え方をビジネスへ落とし込んだ事例も数多く出てきています。
4.まとめ
いかがでしたでしょうか。『ゼロ・ウェイスト・ホーム 』の著者ベア・ジョンソンさんは1年間でビン1つ分のゴミしか出さないという生活を送られているそうです。
モノがあふれる現代において、ベア・ジョンソンさんのような完全なゼロウェイストな暮らしは難しい方がほとんどだと思います。メリット・デメリットを考えながら、それぞれのライフスタイルの中で無理のないよう折り合いを付けながらゼロウェイストな暮らしを目指していただければと思います。
また、個人の意識だけでなく社会全体が変わっていけば、今回挙げたデメリットの多くは解消され、誰でも容易にゼロウェイストな暮らしを送ることができるようになるのではないでしょうか。
他にも捨てない暮らしに関する記事を書いています。
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